「即売会で頒布とわざわざ言う理由」ってなんだろう?


頒布
[名](スル)品物や資料などを、広く配ること。「希望者に無料で―する」「銘酒の―会」
以上、goo辞書より引用。

昔から漠然とは思っていたことですが、近頃改めて考えることがあったので、「同人誌における頒布と販売の概念」について、ちょっと書き残しておきます。

あくまでもちょっとしたものなので、一々「同人誌とは」とかから始めません。あしからず。

世の中随分と進んだもので、現在では即売会に行かずとも同人誌を手に入れることができます。ショップで代金を支払う方法ですね。ショップはそれに応じて、品物を渡す。これはもう間違いなく販売行為です。

このことから「ショップだけじゃなくてイベントでの同人誌の頒布だって、結局は販売と変わらないんじゃない?」という疑問が生じる場合があります。

多分、頒布って言い方をわざわざする場合があることについて、同人に関わった人なら大なり小なりこの手の疑問を持ったことがあると思うんです。

ただまあ、大人になって何年も経つと、「販売目的(ショップのような)と、結果として販売行為になっている(即売会での頒布のような)のとでは意味合いがかなり違う」ってことに、それなりに気付いてきます。()の中で「ような」と一々つけてるのは、厳密に区分できるものじゃないからです。ショップとして形態があやふやな場合もあれば、販売目的が明確にあるサークルさんもいるでしょうから。その都度判断するもので、包括的にどうこう言えるもんじゃありません

ここで想定しているのは大体、「お金を受け取って同人誌を一般参加者に渡しているけど、売上を至上としているわけではない人達」みたいな、まあそんな具合の、いわゆる一般的な同人サークルだと思ってください。

「なんだ、そんな漠然とした話なのか」と思う方もいらっしゃると思うんですが、そもそも「ショップだけじゃなくてイベントでの同人誌の頒布だって、結局は販売と変わらないんじゃない?」という疑問自体、かなり漠然としたものを対象としています。この疑問にサークルの形態についての定義があれば話は変わってきますが、それはここでは話題にしません。

そういうサークルが何を目的として即売会に参加しているか、ってのを考える場合、ここに販売目的を認めてしまうと、それだけでかなり話が狭まってしまいます。一応書いておきますが、法律・条例上の区分の話ではないので、気を付けてくださいね。

具体的にどれぐらい狭まってしまうかというと、「あのサークルは売り上げは大したことないけど、面白い」とか「あのチャレンジ精神をどうこうすれば、もっと売れるのに」とか、考えてしまう。

これは生活の中に貨幣価値が刷り込まれている以上、誰だってありうることで、これ自体は悪いことじゃないと思います。結果として販売行為になっているとしても、「売り物だからちゃんと作ろう」と考えている場合もあります。サークル参加側の意識として、これは別に変なことじゃないでしょう。

じゃあ、何が問題なんでしょう? それは、一般参加する場合の話です。大多数の方はこれですが、サークル参加している人でも一般参加することはあります。サークル参加中に他のサークル回ったりする場合もありますね。

で、即売会はあの場所自体が表現の場みたいなところがあって、まあこれについては色々ご意見あると思うんですが、そういう議論の余地もそこに含まれるもんだとも思いますので、細かい部分は割愛。

そういう即売会に販売目的前提の考え方を持ち込んでしまうと、サークル参加者というより、一般参加者の方に不利益がある。と、私はそんな風に思うんですね。

売上ってのはシビアな一方、それを価値基準にしてしまうと、凄く簡単になってしまうんです。一般的な市場でもそうですが、専門性が高くなってしまう。スーパーで買い物するとき、農家の野菜を買うとき、基本的に安い高いで考えますが、一方でどういう作り方をされてるか、サービス価格として妥当か、とか、スーパーに通い詰めてないとわからない思考が要求されてきます。

それが悪い、なんてことを私は言いたいわけじゃないんです。ただ、「どうせ販売目的と変わらないんだから、頒布なんて言い方は止めるべきだ」とか、そういう考え方になってくると、即売会の魅力を感じる機会を喪失することになってしまわないかと、不安を覚えるんです。

少なくとも、こういうぐだぐだっとした文章の意味を考えさせられる機会を、私は今回設けることができました。皆さんも試してみませんか?

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